第28章 君の母ちゃんは君を要らないんだよ

 

ふいに、男の脳裏に何かがひらめいた。血のように紅い瞳の奥で、陰湿な光がひと筋、ぎらりと走る。

古川寒弥は拾い直したスマホを握り、指先で画面を素早く滑らせた。古川本家の固定電話へ発信する。

コールが途切れ、受話口におばさんの声が乗った。

「先生?」

「辰は?」

「ぼっちゃん……少し荒れておりまして。夕飯もあまり召し上がらず、いま西川さんとお部屋に……」

西川星奈。――また、来ているのか。

古川寒弥の眉が、ほんのわずかに寄った。だが次の瞬間、その不快は、さらに強い衝動に塗りつぶされる。

「電話を代われ」

――古川本家、子ども部屋。

西川星奈は、今日はやけに辛抱強かった。

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