第37章 六千万

 

夜は墨を流したように濃く、星市は紙醉金迷のネオンに沈んでいた。

立花徹の車が、「クラウド」クラブの正面で静かに停まる。

星市きっての最高級クラブ。出入りするのは、財界の頂点にいる者ばかり――そんな「金の匂い」が、空気そのものに染みついている。

助手席の須藤寧音は、すぐには降りなかった。

煌々と光る外観。けれど、どこか人を拒むように冷えた建物を見つめる。指先まで、ひやりと冷たかった。

……来てしまった。

祖父のために。

唯一、彼女に温もりをくれたのに――自分が巻き込んでしまい、いまは病床に横たわる老人のために。

選べなかった。選べるはずがなかった。

「本当に……決めたのか...

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