第39章 怖がるな

 

深い無力感――裏切られた怒りと、踏みにじられた羞恥がないまぜになって、氷の潮みたいに一気に押し寄せる。たちまち彼女の全身を呑み込み、息さえ奪った。

自分はもう十分に強いと思っていた。けれど結局、彼の前では――好きなように弄べる玩具のままだった。

「ねね……」

年老いた、それでも温かな手が、そっと彼女の冷え切った手の甲を包む。

古川爺さんが、いつの間にか傍に立っていた。濁っているのに不思議と冴えた眼差しに、溶けない心配と痛ましさが滲んでいる。

「大丈夫だ、怖がるな」

落ち着いた声。芯があって、胸の奥へ真っすぐ届く。崩れかけていた感情に、強い支えが差し込まれた。

「爺さんがいる...

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