第45章 寧音さんが寒弥さんを裏切った

 

病院の廊下には、相変わらず馴染みの消毒薬の匂いが漂っていた。

古川寒弥は片手に保温ポットを提げている。須藤寧音が以前いちばん好きだと言っていた、鳩のスープだ。

それだけじゃない。花屋にも立ち寄って、彼女の好きなチューリップを一束、買ってきていた。

「……本当に決めたのか?」

立花徹の声には、隠しきれない不安が滲んでいる。

「寧音、君が彼を憎んでるのはわかる。でも、こんなやり方で……」

「私はただ……事実を言ってるだけ」

須藤寧音は一拍おいて、吐き出すように続けた。

「立花徹、知ってる? 今は、あいつの名前を思い浮かべるだけで吐き気がするの」

「自分勝手なところも、冷酷な...

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