第55章 なぜあなたは西川おばさんのようにできないのか

浜江アパートの一室。

暖かな黄味のフロアランプが、部屋に沈んでいた冷えた空気をそっと追い払っていた。

立花徹は、黒いベルベット張りの小箱をひとつ、須藤寧音の前のローテーブルへ静かに置く。

「開けてみて」

穏やかで、背中を押すような声だった。

須藤寧音は少しだけ躊躇してから手を伸ばす。指先に触れたベルベットはひやりとしていて、その感触に小さく息をのんだ。

留め具を外し、そっと蓋を開ける。

中に収まっていたのは、クラシックな意匠のマイク。

全体にくすんだ金色が宿り、光を飲み込むように鈍く艶めいている。

ノイマンU47。

音の世界では「伝説の声」とまで呼ばれる名機。無数の声優が...

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