第60章 お腹の子は、いったい誰の子だ!

夜は、水のように冷たかった。

病院の正面玄関。夜風が初春の骨身にしみる冷えを連れて、須藤寧音の薄いトレンチの隙間へ容赦なく吹き込んでくる。

白々しい外灯が、向かい合う二つの影を長く短く引き伸ばし、刃が触れ合う直前みたいな沈黙だけを地面に落とした。

空気まで凍りついたみたいだ。

須藤寧音は古川寒弥に車のドアへ押しつけられていた。手首を掴む指は鉄の万力。骨が軋むほどの力で、逃げ道を塞ぐ。

男の顔が近い。近すぎて、こめかみの包帯の下から滲んだ赤が、整いすぎた白い頬を伝い、街灯の鈍い光の中で不吉に光っているのが見える。

身に着けているのは、青と白の縞の病衣。荒い動きで襟元が開き、筋の通っ...

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