第113章

湊はスマホを握りしめたまま、口元がどうしても緩んでしまう。

――彼女のほうから、電話をくれた。

しかも「忙しい?」なんて聞いてきた。

……私のこと、ちゃんと心に置いてくれてる。

「忙しくないよ。全然」湊は慌てて答えた。「会社の用事も片付いたし、最近は落ち着いてる」

そう口にしながら、ふと脳裏に浮かぶ。

ファングが自分を見た、あの挑発するみたいな目。

湊の笑みが、すっと薄くなった。スマホを握る手に力が入る。

黙り込んだ。

美月はしばらく待っても返事がないので、眉をひそめる。

「……どうしたの? 急に黙って。さっき、何か言いかけたでしょ」

湊は口を開き、閉じて――迷ってから...

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