第53章

「おまえ、あの子のところへ行って何になる」

廊下のほうから、冷えた声が不意に落ちてきた。

拓真が電動車椅子を操作し、ゆっくりとリビングへ滑り込んでくる。表情は乏しいのに、口元だけがうっすらと歪んでいた。

「騒ぎが出た瞬間から、すぐ美月のせいにする。……その発想自体がもう滑稽だろ。もしかしたら、やったのは美咲かもしれないのに」

「美咲は、おまえらが思ってるほど“無垢”じゃない」

「拓真! 何をでたらめ言ってるの!」

由利が指を突きつけ、甲高い声で怒鳴りつけた。

「美咲はあんたの妹よ! どうしてそんな疑い方ができるの! あの子がどれだけ優しくて、素直で――そんな子が、法に触れるよう...

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