第103章

病室の沈黙が、数秒だけ落ちた。

榊原冬真はすぐには頷かなかった。俯き、ベッド脇の棚に置かれた書類袋へ目を落とす。次いで、シーネで固定された清宮紬の腕と、頬の擦り傷。視線の色が、さらに濃く沈んだ。

「わかった」冬真が言う。「例の“追っかけ”のほうは、俺がやる」

「少し強めで」紬が言った。

「どのくらい?」

「殺さなければいい」

榊原冬真の口元が、かすかに動いた。昨夜から今までで、初めて笑いに近い表情だった。

彼は腰を折り、紬の額に軽く触れる程度のキスを落としてから立ち上がり、病室を出ていく。

扉のところで振り返る。

「今夜、戻る」

「うん」

扉が閉まった。

岩崎真乃と組...

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