第104章

午夜。清宮紬は、けたたましい着信音で叩き起こされた。

目を開けるより先に、ベッド脇で電話に出る榊原冬真の声が耳に入る。低く、喉の奥で押し殺したような声。彼女を起こさないように――そんな配慮が滲んでいた。

「もしもし……はい、榊原です」

紬は動かなかった。カーテンの隙間から射し込む細い光が、冬真の顎のラインをなぞる。髪は寝癖で乱れている。……その男が、ふいに黙った。

清宮紬は目を開けた。

彼女は顔を見なかった。携帯を握るその手だけを見た。指が、じわり、節ごとに、ゆっくりと締まっていく。最後には――音もなく、拳になる。

「……わかった」冬真が言った。「今から向かう」

通話を切っても...

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