第105章

あの夜、榊原冬真が寝室に戻ったのは深夜もだいぶ過ぎてからだった。

部屋に入ると、清宮紬はまだ眠っていない。窓辺に腰を下ろし、古い写真を指先でそっと挟んでいた。叔母さんが若いころの写真。大きな古木の下に立っている。

「いま何時?」

紬が訊く。

「1時過ぎ」

「どうして寝ないの」

「待ってた」

榊原冬真は向かいに座った。

「明日のことだけど……前に立とうか? 俺がついていれば――」

清宮紬は彼を見た。

「後ろでいい」

それから、少し間を置いて。

「……近くに立って。たぶん、一瞬だけ気が逸れる」

「わかった」

彼はそれ以上、聞かなかった。

清宮紬はその写真をアルバムに...

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