第109章

午前8時45分。

開廷まであと15分。傍聴席はすでに身動きも取れないほど埋まり、通路には肩に担いだカメラを構えるテレビ局の取材陣。後方には自称メディアの配信者が立ち並び、野次馬まじりに顔見知りの経済人まで混ざっていた。

暖房が効きすぎて、香水と汗が混ざったにおいが鼻につく。息苦しいほどの熱気。

全員が、たった一つの事件を見に来ていた。

Y市でこの規模の相続トラブルとなれば、街のニュースを半分は食わせられる。しかも「本物と偽物の令嬢」「取り違え」「悪徳養父母」――燃料ならいくらでも揃っている。

「来たぞ! 原告側、入廷!」

誰かが叫ぶやいなや、廊下のフラッシュが一斉に弾けた。

先...

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