第17章

ここ数か月、その言葉は彼女の口癖みたいに、ほとんど毎日こぼれていた。

同じ頃、清宮紬は部屋にいなかった。美坂莉央にひとこと告げると、荷物をまとめ、そのままY市行きの便に乗り込んだ。

手下からの報告では、例の抗がん剤原料の売り手が突然「即日オークションにかける」と言い出し、清宮紬が支払っていた手付金も全額突き返してきたという。

『ボス。向こうの話だと、高値をつける奴がいるなら、相手が誰だろうと売る気みたいです』

闇市を長年回してきた清宮紬にはわかっている。こんな動きが出る理由はひとつしかない。

新しい買い手が現れたのだ。金も権力もある、厄介な新客が。

だが、ここは利益至上の闇市だ。...

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