第24章

スーツケースが彼女の目の前へ押し出された。榊原冬真の声は低く、そこには一片の拒否も許さない圧があった。

「K市」

「今すぐ」

その言葉から二時間もしないうちに、清宮紬は夢でも見ているみたいだった。車内、空港、機内――そして、K市郊外へ続く林の小道。

道の両脇に並ぶ見慣れた若葉の色を目にして、紬は思わず眉を寄せる。

「榊原様、この近くにもお家があるんですか?」

榊原冬真は窓の外へ顔を向けた。わざと淡々としているのに、両手は落ち着きなく上着の裾をいじっている。

「誰が俺の家に行くって言った?」

車が一キロメートルほど進んだところで、紬はもう一度問いかけた。

「今回の出張、具体的...

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