第26章

電話は清宮紬の手からするりと滑り落ち、床に落ちる寸前まで、スピーカー越しに部下の慌てた音声が流れていた。

「ボス? メッセージ、届いてますか?」

紬が屈んで拾い上げたのは、それから一分も経ってからだ。

同じころ、廊下のほうから足音が近づき、美坂莉央の笑いを含んだ声が飛んでくる。

「冬真さん、先に上で見てきて。紬が寝てたら、私が起こしてくるから」

榊原冬真は寝室の扉の前で足を止め、ノックしようと手を上げた。だが、その瞬間、扉のほうが先に開く。

無表情の清宮紬が、冷たい空気をまとったまま立っていた。

「どういうつもり?」

冬真は一瞬きょとんとしたが、すぐにいつもの紳士的な笑みを作...

ログインして続きを読む