第27章

榊原冬真の声が、いつもの淡々とした調子へ戻った。

「母さんは毎週ここで、定期の治療を受けてる」

「ちょうど今週分が、今日なんだ」

鉄の扉がゆっくりと押し開かれ、「ギィ……」と軋んだ音を立てる。

廊下の灯りが少しずつ室内の闇を食い破り、薄くなった白髪と、かすれた呼び声をあらわにした。

「冬真……来てるの?」

榊原冬真の声が、わずかに震えた。ほんの一瞬、幼い頃に戻ったみたいに。

「母さん、俺だよ。婚約者を連れてきた」

そう言いながら冬真は、清宮紬を自分の前へ引き寄せた。彼女の顔に浮かんだ驚きには、まるで気づかない。

白髪が前後にふらりと揺れ、部屋の奥からしゃがれた笑いが漏れた。...

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