第42章

ほどなくして病室の中から、朗らかな笑い声が弾けた。合図を受けたように警護が動き、群衆へ歩み出る。

「皆さま、少しお下がりください。ご当主がお出になられるかもしれません」

その一言は人を散らすどころか、静かな水面に餌を落としたようなものだった。

一同はたちまち、獲物を狙って息を潜める魚の群れに変わる。視線は警護の背後――あの扉へ、釘づけだ。なかには腰を落として、覗き込むように構える者までいる。

案の定、扉が引かれた瞬間――榊原成岡が顔を紅潮させ、先頭で現れた。

途端にどっと押し寄せる人波。警護がいくら腕を広げても、誰ひとり引かない。

「榊原のおじいさま、退院なさるんですか?」

「...

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