第60章

榊原冬真が身を引くと、清宮紬はするりと車外へ出て、きょろきょろと周囲を見回した。

「で、あなたの車は?」

榊原冬真は苦笑いし、どうしようもなさそうに両手を広げる。

「親父がさ。俺が君を怒らせて追い出したって聞いた瞬間、家から叩き出してきたんだよ。『紬を連れ戻すまで鍵は開けない』ってさ」

それを聞いて、清宮紬は思わず同情してしまった。

「外じゃ向かうところ敵なしの榊原様でも、家では絶対君主ってわけじゃないんだね」

言い終わる前に、榊原冬真の腕がふいに彼女の腰へ回る。

「だから早く一緒に帰らないと——自分の婚約者がいじめられてるの、放っておけないだろ?」

清宮紬は笑っているようで...

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