第68章

清宮紬の顔に、一瞬だけ戸惑いが走った。腕時計の文字盤へ視線を落とし、冷えた眼差しをふっと横へ流す。

「昨日の夜から数えても、約束の時間まで最低でもあと8時間ある」

榊原冬真は気まずそうに頭をかきながらも、帰る気配がない。

それを見て、清宮紬は小さく息を吐き、後ろへ数歩さがってわずかな隙間を作った。

榊原冬真はぱっと口元をゆるめ、部屋へ入ろうと踏み出す。

「紬、やっと――」

言い終える前に、脇へ引かれていた玄関の扉が残像になって襲いかかった。

榊原冬真は慌てて身を引く。次の瞬間、扉は乱暴に叩きつけられ、閉まった。中から、かすれ気味の声が漏れる。

「ズルしたら、時間は倍」

浮か...

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