第72章

清宮紬はすぐには返さなかった。代わりに、電話の向こうの榊原冬真が先に口を開く。

「……なに。まだ面倒ごと?」

清宮紬が「黙れ」とでも言うような目を向けると、榊原冬真は即座に口をつぐんだ。

そのとき、廊下のほうからまた騒がしい物音がする。高村美咲は顔色を変え、扉の前まで行くと声を落として叱りつけた。

「うるさいんだけど? 清宮社長が仕事中!」

すぐに若い男の声が返ってくる。

「すんません高村さん! じゃあ、あとでまた来ます!」

その声を聞いた清宮紬は通話を切り、面白がるように扉へ歩み寄った。わずかに開いた隙間から外をのぞく。

高村美咲の前には、若い男たちがわらわらと群がっていた...

ログインして続きを読む