第73章

高村美咲が反応するより早く、清宮紬はすっと立ち上がった。眉をきつく寄せ、まるで臨戦態勢だ。

事務室の扉がそっと押し開けられ、痩せぎすの中年男が一歩踏み込んでくる。

高村美咲は反射的に振り返り、思わず声を上げた。

「清宮尚大!」

数日前よりも明らかにやつれている。身にまとっていた高級スーツも、いまは地味な私服に変わっていた。

だが、あの狡猾な面構えだけは少しも変わらない。――いや、むしろ数日前、ロビーで対峙したときより、どこか得意げですらある。

「おや。あの日の小娘じゃないか。こんなところで会うとはな」

清宮紬は顔を硬くし、取りつく島もない声で言い放つ。

「出ていって」

清宮...

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