第75章

梅原は慌てて振り返り、階段へ足をかけようとした――その瞬間、平井にがしっと腕を掴まれる。

「なに。久しぶりなんだし、ちょっとは俺と話す気ないわけ?」

梅原はますます訳がわからない顔になり、階段のほうを指さした。

「聞こえなかったんですか? 若奥様が……」

平井は鼻で笑うように梅原を見下ろす。

「聞こえたから言ってんだろ。だから上がるなって」

「ほら、さっさと扉閉めろ。用があるなら若様が呼ぶ」

「それと、リビングの灯り。全部消せ」

同じころ、二階の部屋では清宮紬が壁に背をぴたりとつけ、身体をわずかにくねらせながら、唇に触れそうな熱をどうにか遠ざけようとしていた。

「動かないで...

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