第78章

渡辺七海は、清宮紬が盛透投資会社の本社からわざわざ引き抜いてきた中核人材だ。小川月奈たちと肩を並べるだけの経歴もある。

だが清宮の中での彼女は、いつだって「できる女」の顔を崩さない存在だった。机に突っ伏して涙をこぼすどころか、誰かに弱みを見せることすら、この女には起こり得ない──そう思っていた。

それに、途切れ途切れに繰り返される「パパ」という言葉。

家庭で何かがあった。そう直感した清宮は、足音を殺して近づき、そっと上着を脱ぐと、慎重に七海の肩へかけた。

……が、相手の眠りは思ったよりずっと浅かった。

上着が触れた、その瞬間。

渡辺七海の身体がびくりと跳ね、机から弾かれるように起...

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