第82章

電話を切った若い男は、まだ心臓がどくどく鳴っているのを誤魔化すように、脇のソファへ視線を投げた。

「榊原社長……さっきの俺、うまくやれてました?」

榊原冬真は無表情のまま小さくうなずくと、指に挟んでいた煙草を揉み消し、代わりにキャッシュカードを差し出した。

「約束どおりだ。このロットは榊原グループが市場最高値で買い取る。中身は手付けの五割」

震える両手でカードを受け取った男は、腑に落ちない顔を隠せない。

「榊原社長……そこまでして、何の意味が……」

冬真の静かな瞳に、ひやりとした刃が走る。男はぞくりと総毛立った。

「聞かなくていいことは聞くな」

それから低い声で、釘を刺す。

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