第85章

岩崎成夫は薄く笑った。そういう持ち上げ方に、よほど満足したらしい。

「気ぃ使ってくれてありがとな、内田さん。時間できたら、飯でも行くか?」

受話器の向こうは、ほとんど間髪入れずに返ってきた。

「いつでも空いてます! 成夫さんのご都合がよければ、明日こちらから伺います!」

岩崎成夫は、けらけらと笑い声を連ねた――会社を畳んでからというもの、笑うことさえ自信がなくなっていたのに。

今日は、その笑いがまた喉の奥に戻ってきた。

「正直、明日も空いてるかは怪しいな」

「賞を取ってからってもん、この携帯が鳴りっぱなしでさ。飯の予定なんて、たぶん1か月先まで埋まってる」

そう言いながら、車...

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