第87章

翌朝。飛行機はY市空港へ、揺れもなく滑らかに降りた。

岩崎真乃は胸の奥がざわつくのを押さえ込みながら、タラップを下りる。

出口付近は人で溢れ、スーツケースの車輪がガラガラと床を転がる音がひっきりなしに響く。そこへ旅行客の話し声が混じり、やかましいほどの喧騒になっていた。

――なのに。

改札を抜けた瞬間、真乃は一目で見つけた。北条家の専用車。

北条千隼が車体にもたれて立っている。指先でスマホの縁を無意識に撫で、視線だけは出口に縫い付けたように動かない。

彼の中では、筋書きができあがっていた。

岩崎家のお嬢様だった岩崎真乃も、岩崎成夫の後ろ盾を失ったいま、やつれて、みすぼらしい格好...

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