第88章

その言葉を聞いた瞬間、岩崎真乃の顔色がさっと変わった。

以前の彼女なら、値段など聞きもしない。カードを一枚ひらりと差し出し、羨望とおだての視線を浴びながら先頭を切って中へ入ったはずだ。

けれど今の真乃が持っているのは、せいぜい数万。値段を尋ねる勇気すらなかった。

それに――北条千隼は、とにかく面子を重んじる男だ。たかが店員に入口で止められるなんて、きっと……

そう思うと、真乃は思わず横目で隣の北条千隼をうかがった。

案の定、北条千隼の顔にも、気まずさが薄く滲んでいる。

だが二人が口を開くより早く、周囲の取り巻きの女たちが店員の前へわっと押し寄せた。

「あなた、このお二人が誰だか...

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