第90章

「――“彼氏”じゃない。今は“婚約者”だ」

言い終わらないうちに、北条千隼は顔色ひとつ変えずグラスへ口をつけ、淡々と訂正した。

久々に注目を集める感覚を味わった岩崎真乃は、例の計画を実行に移す決意をいっそう固める。

それを聞いた井上海斗が、面白がるように口元を歪めた。

「へえ? 真乃、数か月見ない間に大人になったじゃん。彼氏を守れるようになったんだ」

「よし! 真乃の友だちとして、俺も一肌脱ぐか。今日は俺がおごる。好きなだけ食って飲め!」

人混みの中から、女の子が笑いながら返す。

「海斗さん、言うの遅いよ。今日の会計、北条さんが払ってる。部屋押さえるだけで500万だって!」

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