第99章

舞台裏の通路の奥から、靴音が近づいてきた。急ぎもせず、ためらいもない足取り。

全員の視線が、一斉にそちらへ吸い寄せられる。

入ってきたのは清宮紬だった。

白いシャツに着替え、袖は肘の手前まで無造作にまくっている。髪は後ろでゆるく束ねただけ。清潔で、余計なものがない。

楽屋にひしめく、作り込んだ衣装とメイクの出場者たちの中では、むしろ彼女だけが浮いて見えた。

岩崎真乃の瞳孔が、きゅっと縮む。

——なんで、彼女が。

工藤葉月が振り向く。張りついていた冷たさが、ようやくわずかにほどけた。清宮紬に小さくうなずき、淡々と、それでいて疑う余地のない口調で言う。

「真夏。来たのね」

楽屋...

ログインして続きを読む