第9章

 あの地獄のような日々を置き去りにしてからというもの、時間は羽が生えたみたいに過ぎていった。冬の雪も、春先のぬくもりも、瞬きをする間に通り過ぎた気がする。

 気づけば、三月のまだ冷たい夜風が、袴の裾をふわりと持ち上げていた。

 講堂の扉が背後でばたんと閉まり、盛大な卒業祝賀会のどよめきがそこで断ち切られる。

 涼真が私の手をきつく握り、群衆から離れて、誰もいない小道へと引いていく。

「締めの乾杯をすっぽかすなんて、有名な結城教授らしいね」私は彼の歩幅に合わせてついていき、少し息を弾ませながらも、胸の奥でこっそり高鳴るものを感じていた。「誰かに見られたら、明日大学の掲示板、大炎上だよ」...

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