第11章 俺のものになれ

道中、相馬蛍は真田辰則が以前とは違うことに気づいていた。ハンドルを握る速度が、これまでの彼とはまるで別人みたいに落ち着いている。急かすでもなく、遅すぎもしない。乗っているほうが妙に楽で、身体の力が抜けてしまうほどだった。

変わったのは自分だけじゃない。――この五年で、彼も変わったのだ。

もう、あの近寄りがたい真田社長じゃない。

車内には、男の身体から立ちのぼる青松みたいな匂いが濃く漂っている。相馬蛍は窓を指一本ぶんだけ開け、晩秋の夜風を頬に受けた。

ひやり、とした空気が肺の奥まで入り込む。

その瞬間、頭がすっと冴えた。

今の自分は、別の立場で彼と向き合っている。五年前の、何も持た...

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