第21章 わけもなく誘拐される

相馬蛍はナビの表示どおり、城隍廟の近くにある路地へ辿り着いた。

ひと目で分かった。三階建ての低い建物が、やけに目立っている。表は飲食店らしい造りで、白を基調にしたミニマルな外装だ。

さっきまで降っていた雨の名残が空気に溶け、濡れた石畳から青い匂いが立ちのぼる。蛍は足元の水たまりを避けながら進み、スマホの画面に出た「到着」の文字を見て、伏せていた視線を不思議そうに上げた。

――ここ、だよね。

たしかにその建物だった。けれどシャッターは下り、二階も三階も灯りがついていない。

相馬蛍は近づいた。呼び鈴は手を伸ばせば届く位置にある。だが時刻はもう夜十一時過ぎ。押すのはさすがに失礼かもしれな...

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