第45章 送り先を間違えた

相馬蛍はふっと目を瞬かせ、胸の奥がわずかに揺れた。

黒木家は桁が違う。夢の中でさえ縋りつけないような栄華と富が、そこにはある。

母が事故で亡くなってから――あれほど長いこと知らずにいた温もりを、黒木家はこの数年、惜しげもなく彼女に与えてくれた。

たしかに、今のままでいいのかもしれない。真田辰則の言うとおり、何も知らないふりをして、ぼんやり一生を終える。それはそれで幸せだ。すべてを白黒つける必要なんてない。

けれど――相手は実の母だ。

この世でいちばん近しい人が、四十歳で、生きたまま焼き殺された。

そんなもの、どうして手放せる。

父は言った。母――五味彩南は長年うつを患っていて、...

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