第54章 脅威

危険な気配が、瞬く間に彼女を包み込んだ。

相馬蛍は眉間をきゅっと寄せ、男の腕に添えていた手がかすかに震える。

「ご、ごめんなさい。私、わりと直球な性格で……嫌なら、もういいです」

黒木礼は冷えた視線で、彼女を数秒じっと見据えた。

たった数秒。けれど相馬蛍には、足元が崩れるほど長く感じられた。脳裏をよぎるのは、彼が裏切り者や敵に向ける、ためらいのない処断――あの容赦のなさ。

偶然、何度か目にしたことがある。だからこそ、黒木礼が怖い。

怒らせたら、真田辰則の比じゃない。下手をすれば、梓哉にだって――。

「下手をすれば」じゃない。間違いなく、そうなる。

ふらつく彼女の身体を、黒木礼...

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