第59章 何の話は部屋に入る必要があるのか

母の名を耳にした瞬間、相馬蛍の胸がどくん、と跳ねた。立て続けに心臓が嫌な音を立て、頭の中が一気に冴えわたる。呼吸まで浅く、速くなっていく。

「そうそう、あの人。昔S市の名家、五味家の五味彩南。すっごく綺麗だったんだって……でも運が悪くてさ、まだ四十歳で撮影現場の火事に巻き込まれて、焼け死んだんでしょ」

もう一人の女が、ふっと声を落とした。

「噂だけど……火事の日、夏川香織と五味彩南、同じメイク室にいたらしいよ」

「しかもあれ、事故に見せかけた『仕込み』だったって話。夏川香織と五味彩南、仲良しの二人をまとめて消すつもりだったとか」

「ただ夏川香織のほうが運が良くて、すぐ助け出されたん...

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