第10章 犬のように這い出る

雲田茜は長い夢を見ていた気がした。夢の中には骨まで凍えるような冷たい川があり、その川には灰色のぼろぼろの衣を着た渡し守がいた。渡し守は船を操って雲田茜の前まで来た。

「さあ、上がりなさい、子よ。憎しみも悩みもない場所へ連れて行こう」渡し守は雲田茜に手を差し出した。その手はとても痩せていて、骨に薄い皮が被さっているだけのようで、骸骨のように干からびていた。

雲田茜の心の中で、船に乗ってはいけないと警告する声が繰り返し響いていたが、彼女の体は自分の意志に反して、その渡し守に手を伸ばしていった。

そのとき、雲田茜の背後から声が聞こえた。

「俺がいる限り、お前は彼女を連れて行けない!」

そ...

ログインして続きを読む