第47章 逃げた夫

雲田茜と田中瑶子は、この口論が実は雲田美咲の策略によるものだとは知らなかった。

そのとき、二人は同時に賀川お爺様の姿を見かけ、二人揃って駆け寄り、賀川お爺様の左右に立った。

「賀川お爺様、確かに私、少し興奮してしまったかもしれませんけど、全部雲田茜のせいなんです。彼女があなたに贈った絵は彼女の贈り物じゃありません。賀川哲也の叔父さんが送ったものです。彼女がお爺様を騙すのを黙って見ていられなくて…虚栄心の塊なんです」田中瑶子は賀川お爺様の腕にすがりながら甘えた声で言った。一方、雲田茜は何も言わなかった。賀川お爺様が自分のために説明してくれると知っていたからだ。

賀川お爺様は腕を振って田中...

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