第61章 鈴木翔太と林原海子

林原海子は、自分の口がこれほどまでに不運を招くとは夢にも思っていなかった。良い予感は決して当たらないのに、悪い予感だけは面白いように的中するのだ。

たとえば今がそうだ。雲田茜たちの姿を認めるや否や、田中瑶子が冷笑を浮かべて歩み寄ってきた。

「まさか、あなたたちがここに来るなんてね! この店がウチの経営だって知らないわけ?」

雲田茜は眉をひそめた。その事実は初耳だった。この街では四大財閥がそれぞれ産業を牛耳っているが、具体的にどの店舗がどの家の傘下にあるかまで、雲田茜がすべて把握しているはずもない。

雲田茜は林原海子の手を引いて立ち去ろうとした。だが、林原海子はある面白い点に気...

ログインして続きを読む