第76章 似たような光景

雲田茜のスマホには、緊急連絡先のアクセス権限が設定されていた。通話ボタンを五回連打するだけで、最も親しい相手のスマホに救難信号が送信される仕組みだ。

本来、雲田茜はこの権限を林原海子のために空けていたのだが、それを知った賀川時が自分の端末を登録するよう強く希望し、最終的には雲田茜もそれに折れたのだった。

賀川時は雲田茜からのSOSを受信すると、即座にオフィスを飛び出し、部下への連絡を入れた。

「直ちに雲田茜のスマホを追跡しろ。それと彼女の行方を捜せ!」

賀川時は氷のような冷徹な口調で命令を下した。その瞳の奥には、津波のような激情と暴虐が渦巻いていた。

十分後、賀川時は雲田...

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