第82章 新たな恋敵

オーストラリアの上空へと滑り込んだ一機の飛行機が、やがてシドニーの空港に舞い降りた。

十数時間にも及ぶ長時間のフライトは、身体を芯から重くさせる。タラップを降り立った雲田茜は、凝り固まった身体をほぐすように大きく伸びをした。全身の骨がパキパキと音を立てて悲鳴を上げているようだ。

「あなたの実家、この街にあるの? 空気がすごく美味しい」

雲田茜は両腕を広げ、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。

賀川時はスーツケースを提げたまま微笑み、歩み寄って雲田茜を抱きしめた。

「森林のカバー率が高いからな、空気は当然いいさ。行こう、親父が迎えの者を寄越してるはずだ」

ふと、賀川時は雲田茜の手が微...

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