第84章 俺は馬鹿じゃない

白鳥紗雪は二階へ上がり、賀川時と雲田茜の部屋のドアの前で足を止めた。

ノックしようと手を伸ばした瞬間、その動きが止まる。二人の休息を邪魔するには、それなりの理由が必要だと気付いたからだ。

その時、部屋の中から微かな悲鳴が聞こえたような気がした。白鳥紗雪は眉をひそめ、ドアに耳を押し当てる。

すぐに中から雲田茜の声が聞こえてきた。「やだ、そこ触らないで……まだお風呂入ってないのに」

「俺の嫁さんは風呂に入らなくたっていい匂いだよ。車の中で話したことを覚えてるか? 俺がどれだけ凄いか、確かめたいんじゃなかったのか?」

続いて、賀川時のどこか茶化したような声が聞こえ、じゃれ合うよ...

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