第111章

藤宮弘也は、桜井有菜が不利益を被るとは微塵も思っていなかった。むしろ彼が懸念していたのは、彼女を怒らせた桜井浩明の方だ。とはいえ、相手は有菜の実の父親である。あまりに無様な争いになれば、有菜にとっても決して良い結果にはならないだろう。

桜井有菜が病院に駆けつけた時、祖父はすでに手術室へと運ばれていた。その扉の前で、上原が一人、立ち尽くしている。

「お嬢様、旦那様が……」

上原は目を真っ赤に腫らしていた。ここまで来る間、ずっと泣き通しだったのだろう。有菜は上原の体を支え、ベンチに座らせた。

「上原さん、大丈夫。私がいるから」

有菜はそのまま手術室へと入った。祖父の病状は心筋梗塞。搬送...

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