第185章

チャイムが鳴り、ドアを開けたのは藤宮弘也だった。自ら出向いてきた成田は、弘也の姿を認めると、笑顔で重箱を差し出した。

「藤宮さんもいらしたのですね、ちょうどよかったです。お嬢様のお好きなものばかり、少し多めにこしらえましたので、藤宮さんもぜひご一緒にどうぞ」

弘也は頷き、恭しく重箱を受け取ると、ポケットから1枚のカードを取り出して成田に手渡した。

「藤宮さん、これはいけません。成田家の店はお嬢様のものです。あなた様からお代をいただくわけには……」

弘也が差し出した銀行のカードなど、成田が受け取れるはずもなかった。

「これは北村涼からのものです。弟子入りしてからずっと師匠に恩返しをし...

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