第198章

桜井有菜は男女の機微には疎かったが、医者として見抜けることはある。そのため、親切心から越前光景にいくつか注意を促した。

「お義兄さん、美子さんの治療中は夫婦生活は厳禁です。少し自重してくださいね!」

ぷっと吹き出し、敷居に掴まっていた藤宮美子が声を上げて笑い出した。越前光景は気まずさのあまり、逃げるように階下へ降りていく。その様子に、藤宮美子は腹を抱えて笑い転げた。

「有菜ちゃん、最高!」

そう言いながら、藤宮美子は親指をぐっと立ててみせる。桜井有菜は苦笑いを浮かべつつ、鍼灸の箱を手に寝室へと向かった。

ここ数日と同じツボに鍼を打っていく。藤宮美子は目を閉じ、静かに寝息を立て始めた...

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