第206章

桜井優子は今、胸の奥がざわざわと波立っていた。桜井浩明は発狂し、桜井城は祖父と共に出国し、桜井美月も渡辺家の者について行ってしまった。一瞬にして、自分だけが天涯孤独の身に成り果てたような虚無感に襲われていた。

「お金は要らないわ。秋田さんに頼んで、私が出国できるように手配してちょうだい」

今や村雨家は破産し、村雨茜の息子も連れ去られた。だが茜本人は出国できず、その鬱憤を毎日優子にぶつけてくる。いっそ海外へ逃げたほうが、まだ静かに暮らせるというものだ。

「桜井有菜に伝えて。私はあの子に後ろめたいことなんて何一つしていないと。だいたい、私がいなければ今の桜井有菜は存在しないのだから!」

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