第36章

桜井有菜が車に乗った時、何気なく桜井美月の姿が目に入った。そして桜井美月の隣にいる人物を見た途端、彼女の瞳の光が一気に冷たくなった。

五年前、あの「証拠」とやらを大勢の前にさらしたのは彼女たちだった。それは桜井有菜が十三歳の誕生日だった日。十三年間で初めて、両親が彼女のために誕生パーティーを開いてくれた日だった。

桜井有菜はようやく両親が自分の存在に気づいてくれたと思っていた。だが結果は天国から地獄へ突き落とされるようなものだった。

桜井有菜の様子がおかしいのを見て、藤宮弘也が彼女を見つめた。

「どうした?具合でも悪いのか?」藤宮弘也の心配に、桜井有菜は微笑みを返した。しかし彼女が知...

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