第42章

T市立第一中学は一人の優秀な学生を輩出し、学校の先生方は皆胸を張るようになった。校長も教育委員会で公に褒められ、それを機に桜井有菜に奨学金を支給する申請までしたのだ。

桜井有菜はそういったことにはあまり関心がなかった。彼女はシステム開発に取り組んでいたため、毎晩残業していた。最初はそれが生計のためだったが、今ではすっかり趣味になっていた。

あっという間に金曜日がやってきた。今日はおじいさんの誕生日だったので、朝早くから桜井有菜は土倉さんから電話を受けていた。

「有菜お嬢さん、今日はご主人の八十歳の誕生日です。今夜六時半から皇朝レストランでお祝いの宴があります。ご主人は必ず三女様にいらし...

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