第62章

世の中の父親というものは、大抵が我が子を慈しむものだ。だが、桜井浩明という男だけは例外だった。

「越前叔父様、お気遣いなく。私は美也ちゃんが大好きですし、彼女の性格もとても素敵だと思っていますから」

 越前光景は頷いた。聡明な子だ。越前美也にこのような友人がいてくれて、本当によかった。

 ケーキ入刀の時間、越前美也は家族の中心にいて、両親の手を引いて一緒にナイフを握っている。その光景を傍らで見つめる桜井有菜は、生まれて初めて、他人の人生をこれほどまでに羨ましいと感じていた。

 彼女の背後から、誰かがゆっくりと近づいてきた。そして、有菜の華奢な体をすっぽりと包み込むように抱き寄せる。

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