第78章

桜井有菜は眉をひそめた。集中治療室の前において、「死」などという不吉な言葉は最も忌避すべきものだ。藤宮弘也もまた不快げに眉間に皺を寄せ、桜井有菜を連れてその場へと歩み寄った。

 分家の老婆が放つ言葉は次第に醜悪さを増し、その矛先が藤宮美子と越前美也に向けられているのは明らかだった。

「だから言っただろう! 藤宮の人間になんか関わるんじゃないってね。まだ嫁入りもしてない分際で、涼を死にかけさせるなんて……この疫病神め、絶対に北村家の敷居は跨がせないよ!」

 その「疫病神」が誰を指しているのかは明白だ。これほどまでに罵倒された経験のない越前美也は、瞬く間に目元を赤く染めた。藤宮美子も怒りに...

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