第90章

鳥肌が立つような光景に、桜井有菜とニックは顔を見合わせた。ここは潔く兄妹水入らずの時間にしてやるべきだろう。そう判断した二人は、そそくさとその場を後にし、街へ繰り出すことにした。

「有菜ちゃん、すごく美味い店知ってるんだ。行こうよ、お姉さんが奢ってやるからさ!」

 二つほどブロックを抜けると、ニックはとある路地裏へと有菜を案内した。そこに佇んでいたのは、意外なことに広東料理の店だった。まさかこんな場所で本格的な中華に出会えるとは、有菜も予想していなかった。

 店内の装飾も、テーブルや椅子も、長い歳月による浸食を感じさせる色合いを帯びている。一目で年代物だとわかる家具ばかりだ。

「前、...

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